【医療広告ガイドライン解説】禁止される広告
医療広告で禁止されている内容は大きく分けて以下の7つです。
⑴比較優良広告(他の医院よりも自医院が優れているように見せること)
⑵誇大広告(「最大」などの大げさな表現)
⑶公序良俗に反する内容の広告
⑷患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
⑸治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の 写真等の広告
⑹他法令に違反する広告など
⑺品位を損ねる広告
各項目を例と共に詳しく説明します。
- ⑴比較優良広告
- ⑵誇大広告
- ⑶公序良俗に反する内容の広告
- ⑷患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
- ⑸治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の 写真等の広告
- ⑹他法令に違反する広告など
- ⑺品位を損ねる広告
⑴比較優良広告
「比較優良広告」とは、自分の医院がほかの医院より優れていることで患者を誘引しようとすることです。
ガイドライン本文には、
事実であったとしても、優秀性について、著しく誤認を与えるおそれがあるために禁止される
第3 禁止される広告について 1-(3)
とあります。
要は患者側が必要を超える期待を持って受診をして、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があるため禁止されています。
例えば、以下のような表現が比較優良広告として判断されます。
・ 肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。
・ 当院は県内一の医師数を誇ります。
・ 本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。
・大学病院と同等の医療環境を整えています。
また、芸能人や著名人との関連性を強調することで、患者に対して他の医療機関より著しく優れていると誤認を与えるおそれがある表現は、患者等を不当に誘引するおそれがあることから、比較優良広告として見られ禁止されています。
・ 「芸能プロダクションと提携しています」
・ 「著名人も○○医師を推薦しています」
・ 著名人も当院で治療を受けております。
※著名人と一緒に写っている写真の使用も対象になるので注意
実際の医療行為とは関係なく印象操作とも捉えられかねません。
⑵誇大広告
【誇大広告・虚偽広告】医療広告ガイドライン解説~禁止される広告~
「誇大広告」とは、実際に提供する治療やサービスを、内容・価格の面で優れていると消費者に誤認させるような広告を指します。
ガイドライン本文には
事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告を意味するものであり、医療に関する広告としては認められないものであること。
第3 禁止される広告について 1-(4)
とあります。
また「人を誤認させること」の定義は
一般人が広告内容から認識する『印象』や『期待感』と実際の内容に相違がある場合
第3 禁止される広告について 1-(4)
とされています。
注意したいのが「常識的な判断に基づき、誤認の可能性があるかどうか」で判断されるため「誤認することの証明や、実際に誤認したという結果までは必要としない」ということです。
例えば、以下のような表現が誇大広告として判断されます。
・知事の許可を取得した病院です!
病院が都道府県知事の許可を得て開設することは、法における義務であり当然のことです。それを「知事の許可を得た!」などと強調することで、あたかも特別な許しを得ているかのように広告することは、誇大広告にあたります。
・歯科医師〇名在籍(〇〇年〇月現在)
→示した年月の時点での歯科医師数が事実であっても、状況変化によって大きく減少した場合には、誇大広告として扱われてしまいます。(具体的に「○%の減少から記述すべき」といったルールはありませんが、広告物の文字サイズなど、強調の程度や医療機関の規模から、不当に患者を誘引する可能性があるかどうか判断されます。そのため、実態に即した人数に随時更新することが求められます)
・ 顔面の○○術1カ所○○円(5カ所同時施術の場合)
→例えば、大きく表示された費用が5カ所以上同時に実施したときのセット価格であり、1カ所のみの場合は割増となる場合などは、たとえ小さな文字で注釈をしていても誇大広告と判断されます。常識的判断から見落としやすいと認識されないような書き方が求められます。
・ 「○○学会認定医」「○○協会認定施設」(活動実態のない団体による認定)
→「広告される医療機関の関係者が実質上運営している団体」や「活動実態のない団体」などによる資格認定や施設認定は、患者を不当に誘引する恐れがあるため、誇大広告として扱われます。 「客観的かつ公正な一定の活動実績が確認される団体」かどうかが、判断の基準とされます。
・○○歯科医院 インプラントセンター
→法令の規定、国の定める事業を実施する病院・診療所以外は、医療機関の名称また、名称と併せて「○○センター」と掲載することができません。
ただし、提供する医療を担当する部門名として患者向けに院内掲示しているものを、そのままウェブサイトに掲載している場合は、原則的に例外と見なされます。
さらにその他の例外として、地域における中核的な機能や役割を担っていると都道府県などから認められている場合、または救命救急センター、休日夜間急患センター、総合周産期母子医療センターなどが挙げられます。
・ 術前術後で撮影条件などが異なる写真を使い、手術や処置の効果や有効性を強調するもの
術前術後で異なる撮影条件の写真を掲載し、その効果や有効性を強調することは、不当な誘引につながるため、誇大広告として扱われます。また、あたかも効果があるかのように加工・修正した写真は「虚偽広告」と見なされます。
・ 比較的安全な手術です。
→「比較的」という言葉を使っている以上、「何と比較しているのか」という記述は不可欠です。「漠然とした治療一般のイメージ」などと比べて安全といった書き方は誇大広告と見なされます。
・ 伝聞やエビデンス(科学的根拠)に乏しい情報の引用
→医学的・科学的な根拠に乏しい文献、テレビの健康番組で紹介された治療や生活改善法といったものは、それらだけをもって客観的な事実だと証明することができません。そのため、誇大広告として取り扱われます。
その他、下記のような根拠の乏しいリスク強調、処置の有効性の強調なども誇大広告と見なされます。
「○○の症状のある二人に一人が○○のリスクがあります」
「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください」
「○○手術は効果が高く、おすすめです。」
「○○手術は効果が乏しく、リスクも高いので、新たに開発された○○手術をおすすめし ます」
⑶公序良俗に反する内容の広告
公序良俗に反する広告とは、倫理的・人権的観点から問題のある内容や表現を用いることです。
・男女の性差別(わいせつな表現など)
・地域差別(治安の良し悪しなども)
・残虐な表現
・特定の患者を批判する内容
・不快感や恐怖心を煽る写真や映像の使用
このような内容の広告は倫理的秩序に反することであり、人権を害する可能性が非常に高いため禁止事項となります。
⑷患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
患者の体験談の掲載は基本的に禁止されています。
症状や治療結果は患者によって違ってくるものです。当然、その効果や結果に対する感想も人それぞれ変わってくるでしょう。
にもかかわず医院が新患を誘引する目的で体験談を広告すると、読者に「自分も治療を受ければ同じ結果を得られる」という誤認を与えかねません。そのため、医療広告では禁止されています。
ただし医院が意図せずに掲載された以下のような体験談に関しては不問とされます。
・口コミサイトの投稿
・SNSに投稿されている個人的な体験談
・個人のホームページやブログで書かれた体験談
これらは「医院が意図しない患者個人の意見」という観点から違反にはなりません。
だからといって、
・お金を払って都合の良い口コミを書いてもらう
・仲良くしている患者にお願いして体験談をブログに書いてもらう
など、口裏を合わせて体験談を書いてもらうことはNGなので注意。
⑸治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の 写真等の広告
治療などの内容や効果について、患者を誤認させる恐れのある術前術後の写真を広告することは禁じられています。患者一人ひとりの状態などによって、治療の結果も当然異なってくるものだからです。
ただし、術前術後の写真に通常必要とされる
・治療内容
・費用などに関する事柄
・治療のリスク
・副作用
などに関する詳細な説明を付け加えることで記載が可能になる場合があります。
もちろん、その場合であっても患者にとって分かりやすいよう、十分な配慮は欠かせません。
例えば、写真とは別のリンク先ページに詳細を掲載したり、利点や長所の情報と比べて、極端に小さな 文字サイズでの掲載などは認められていません。
⑹他法令に違反する広告など
医療広告ガイドラインはそれ一つだけで独立して存在しているのではなく、いくつかある法令の掛け合わせでできているものです。
そのため、他法令の規定も遵守した広告作りが求められます。
代表的なのは、
・医薬品医療機器等法
・景表法
・不正競争防止法
・健康増進法
の4つと、医療広告ガイドラインの母体となる「医療法」です。
それぞれの法令がどのように医療広告と関わってくるかを理解しておきましょう。
1.医薬品医療機器等法(薬機法)
医薬品医療機器等法とは、日本における
といった医療に関わる製品に関する運用などを定めた法律のことで、一般的に広く知られているのは「薬機法」という略称です。
(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
医院が広告を出すうえで注意する点は、製品の「販売名(商品名)」を表記できないということです。販売名はすべて一般名のような「特定できない表現」に言い換える必要があります。
例)販売名 → 一般名
セレック(販売名) → CAD/CAMシステム(一般名)
インビザライン → 透明なマウスピースを使った矯正
また、その医療機器・薬剤の説明をする際は、その効果効能の範囲内で広告しなければなりません。
実際の効果とは違った使用方法や効果、性能を謳うのは虚偽・誇大広告と見られて禁止されています。
国内未承認の薬剤や機器はそもそも広告ができません。
2.景表法
景表法とは、
- 消費者の商品・サービス選択の判断を狂わせる
- 行き過ぎた景品の提供や誇大広告
- 虚偽広告
といった不当表示を禁止する法律です。
医療広告ガイドラインは広告に関する法令ということから景表法から多くの影響を受けています。
不当な表示としては、
- 商品やサービスを実際のものより優れているように見せる「優良誤認表示」
- 販売価格や治療費を実際より安いかのように見せる「有利誤認表示」
などが代表的です。
以下のような表現は景表法に振れる可能性があります。
例)
他の歯科医院で抜歯を宣告された症状でも、当院では残せる可能性があります(比較優良誤認)。
インプラント1本通常100万円のところ、40万円で提供(有利誤認表示)。
3.不正競争防止法
不正競争防止法とは、事業者同士が公正な競争ができるように不正な競争を防止する目的で制定された法律です。
他の医院に対する風評被害につながる情報を流す
実際のスタッフの人数より多めに掲載する
治療の効果や成果を匂わせるホームページドメインを表示する(shishubyo-naoru.com → 歯周病治る)
このような内容は不正競争防止法に抵触するかのうせいがあります。
4.健康増進法
健康増進法の中には、自治体や医療機関が日本国民が健康を維持・増進するために協力するよう義務付ける条項があります(第5条)。
歯科医院には深く関わるケースがあまり多くありませんが、ホームページなどに
食品・薬剤の効果・効能を表示する
健康情報を表示する
といった場合には、著しく実際の品質とかけ離れた内容を掲載したり、誤認を与えたりする表現を用いることはできません。
⑺品位を損ねる広告
医療は人の命に関わる分野です。そのため、ユーザーが医院の情報を適切に理解し選択できるように、根拠と客観性を重視した広告制作が義務付けられています。
そのようなことから客観性に欠ける「品位を損ねる広告」は禁止されています。
よく指摘されるのは以下の3つです。
- 費用を強調した広告
(例:インプラント1本たったの14万円!!キャンペーン実施中) - 提供される医療とは直接関係ない事項・物品による誘引
(例:初診の方全員に無料プレゼント贈呈) - ふざけたものドタバタ系の表現
(例:歯磨きをサボる人には担当の歯科衛生士から「お前を歯周病にしてやろううか!(デスボイス)」と言われます(冗談ですwww)。)